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秘境の白い鳥居|高士神社

YI SAN


屏東縣牡丹鄉にある高士神社は、戦後一度は廃墟となり、台座だけの神社跡になりました。しかし、地元住民の積極的な取り組みと日本人の神職の方の支援により、2015年にようやく再建されました。

高士神社の復興

高士神社の復興
高士神社の復興
高士神社の復興
高士神社の復興
高士神社の復興
高士神社の正式名所は「台灣國一之宮高士神社」です。小高い丘の上に立つ純白の鳥居は、世間離れした存在感を放っています。神社のある高士村には、古くからパイワン族が住んでいて、住民のほとんどが、この神社の再建を望みました。理由は、第二次世界大戦中の痛ましい伝説にあるのだと言います。

地元の人によると、第二次世界大戦では多くの若い部族が徴兵され、自分の運命を知っていた彼らは「生きて帰らなかったら、この神社で会おう」と家族に約束したそうです。神社で誓いを立てていることから、遠征に行った人々にとって神社がいかに重要であったかが伺えます。

しかし戦後、神社は廃墟と化し、台風で荒れ果て、コンクリートの土台だけが残りました。それでも地元の人々は、出征前の約束を忘れず、戦争で亡くなった人たちが親族や仲間のもとに帰れるように、神社の再建に取り組みました。しかし、残念ながら台湾で神社を建てる専門家を見つけることが難しく、その願いは2014年に神職者である佐藤健一さんと出会い、プロジェクトが大きく前進するまで叶いませんでした。

部族の人たちが神社の再建を望んでいることを知った佐藤健一さんは、東日本大震災で日本を助けてくれた台湾への感謝の気持ちを込めて、高士神社の再建に協力することを決意しました。神社再建の資金を調達することが困難であることを知った佐藤さんは、自ら費用を負担するだけでなく、日本人コミュニティからも資金を集め、2015年の神社再建と翌年の鳥居の建設を可能にしたのです。現在、高士神社は戦後の台湾で唯一、日本神道と関係のある神を祀っていますが、主祭神は戦前の天照大神からパイワン族の神と戦没者に変更されており、台湾版靖国神社と言えます。


祭事

高士神社 | 令和元年例祭(2019年5月5日)

高士神社の再建後、佐藤健一さんが宮司となり、2015年8月11日に招魂祭、同月12日に鎮座祭を執り行いました。特筆すべきは、高士神社の祭祀はパイワン族の祖霊を祀るだけでなく、日本の神道とパイワン族の伝統を取り入れ、さらには台湾のキリスト教会の牧師たちの祈祷によって発足し、台湾の多元的で包括的な性格を表していることです。
再建以来、元旦の新年祭と5月第1週の例大祭の2回の祭典が行われています。

また、2018年には初めて台湾人神職が高士神社の例祭を執り行い、その神職を務めたのが、佐藤健一さんの養子である黃俊瑜(佐藤冬木)さんであったことも話題となりました。25歳の彼は、幼い頃から日本の神道に興味を持ち、神職者養成コースへの入学を希望して、生活のために日本に出稼ぎに行ったこともありましたが、残念ながら国籍の問題で失敗に終わりました。しかし、偶然にも佐藤健一さんと出会い2018年に夢を叶え、これからの高士神社の祭りは、黃俊瑜さんが行うことになりました。

高士神社社務所(観光案内所)





高士神社の近くにある高士佛旅客中心(観光案内所)は、高士神社の社務所でもあるので、参拝後にこちらで神社関連の小物を購入するのもおすすめです。
日本の神社と同じように、高士神社にも御守、絵馬、破魔矢などがあり、御守はパイワン族の伝統的な色使いで、とても特徴的です。
高士神社の御朱印は、台湾で唯一の御朱印です。祭事の時は佐藤宮司が参拝者に書くのが恒例でしたが、近年はコロナの影響で台湾に来られないので、初詣や例祭も休止しています。しかし、佐藤宮司が日本で書いた御朱印を台湾に送り、元旦に神社で受け取る事前予約を受け付けています。
高士神社の商品のほとんどは、社務所のFacebookページからオンラインで購入できますが、御朱印は神社に参拝した証であり、不在だと本来の意味を失うため、現地での購入・回収のみとなっています。

店舗情報

営業時間:9:00〜17:00
公式サイト:高士神社社務所

アクセス


高士神社は山奥にあり、近くにバス停や駅がないため、車を運転して行くしかなく、それが秘境と呼ばれる所以です。大変な道のりではありますが、高士神社の他に八瑤灣と太平洋を見渡せる展望台があり、美しい景色を眺めることができます。
ただし、気候が不安定なので、見どころを探す時間を確保し、午後の霧を避けるために午前中に登ることをおすすめします。乗り物酔いしやすい方は、事前に酔い止めを飲んでおくと、急な坂道でツアーの楽しみが半減するのを防げます。

近隣の公共交通機関

  • 高雄火車站/高鐵左營站から電車に乗車し、恆春轉運站で下車以降は車移動
  • 屏東火車站から電車に乗車し、恆春轉運站で下車以降は車移動

住所:屏東縣牡丹鄉高士佛29號
電話:08-8810325
公式サイト:https://zh-tw.facebook.com/kuskus0701/

高士村


パイワン族の長老によると、ここはパイワン族が恒春地区に移ってきたときに最初に定住した地域で、約5,000~6,000年の歴史があるそうです。辺境なので、かつては不利な環境とされていましたが、近年は住民の努力により、特産品の農産物から旅行ツアーまで、少しずつ自分たちのアイデンティティを確立し、人気の観光地として生まれ変わることに成功しました。
2009年の台風12号による被害で、高士村の多くの地域が壊滅の危機に瀕していましたが、台灣世界展望會という団体の募金活動により、住民の家を建設するための資金を調達することができました。建設されたヨーロッパ風の住宅は被災者の住まいであると同時に、この地域の景観を特徴的なものにしています。

まとめ

高士神社の再建は、日本と台湾の友好だけでなく、村に新しい生活ももたらしました。地元の人々にとって、高士神社は亡くなった親族と再会できる大切な場所であり、ユニークな鳥居と神社は村の魅力のひとつとなり、村の発展に寄与することになるに違いありません。再建には苦労もあり、残る課題もありますが、この過去と未来の象徴は、村の歴史を物語るだけでなく、高士村が過去にとらわれず、新しいページを刻もうとしていることを示しています。

YI SAN

台湾高雄出身の曽です。インターシップで日本に住んだことがあります。当時はよく神社や古跡 などに行って 、異文化や風土に触れることで、日本のことをより一層好きになりました。台湾に帰った後、台湾の良さも世界中の人に知ってもらいたいと思って、台湾の紹介記事を書き始めました。

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