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食べるお茶|高雄市美濃区で「客家擂茶(食べるお茶)」作りを体験

YI SAN

「擂茶(レイチャ)」とは東方美人茶、酸柑茶と並ぶ客家三大茶の一つで、客家(中国大陸の北部広東・広西・江西・福健などに住んでいて、移住してきた人々)のおもてなしで用いられるお茶です。主に使用する道具は摺鉢とすりこぎ棒で、原料に茶葉、ゴマ、ピーナッツ、玄米などを使用するのが伝統です。擂茶は抹茶と色が似ていることから、同じお茶と勘違いされることが多いです。

客家の擂茶文化は国共内戦の頃に始まりました。当時の客家民族は、頻繁な移動で物資が不足しており、友人が訪ねてきても、わずかな穀物しか手元にありませんでした。おもてなしができないと心配した彼らは、器に穀物と少しのお茶を入れてゆっくり挽き、お湯を淹れました。すると小さな穀物がのど越しのよいおいしいお茶になりました。

また、擂茶には穀物や雑穀、茶葉が含まれているため、客家の方言で「食茶」はお茶を飲むことを意味するのと同時に「食事と一緒にお茶を楽しむ」という意味とも捉えられています。「進來食碗茶!(ぜひお茶を飲みに来てください)」は客家人がお客さんをもてなす際によく使う言葉ですが、お茶で喉の渇きを潤すだけでなく、もてなしの心を表すという意味でもあります。今回は本場の客家文化を体験できる高雄市美濃区を紹介します。

高雄市美濃区へのアクセス

美濃区は高雄市の北東に位置する、客家の集落「六堆」の一つです。約4000ヘクタールの肥沃な土地を有し、南台湾で最も重要な穀倉地帯の一つです。美濃区には鉄道がないため、自動車以外では高雄客運バスE25番を利用するしかありません。海外から来る場合は高雄火車站(高雄駅)近くの建國站(建国駅)で乗車することをお勧めします。今回訪問するお店はかなり離れた場所にあり、移動には約1時間半かかります。美濃区に到着後「成公路」のバス停で下車します。なお、このバスは高速道路を通過するため、指定席しかなく、満席のときや帰宅する学生が多くなる夜遅い時間帯だと乗車できないことがあります。

また高雄火車站の改修工事に伴い、高雄客運建國站のバス乗り場も移転しています。新しい乗り場は分かりにくいかもしれませんので、バスに乗り遅れないよう早めに到着されることをお勧めします。

高雄客運バスE25(E25高旗六龜快線路公車)

運行頻度:出発 毎時20分、帰路 毎時58分
料金:高雄〜成功路 乗車券120元(悠遊カードなら60元)
乘車地:高雄客運-建國站(高雄火車站 付近に位置)
公式サイト:https://www.kbus.com.tw/bus_info.asp?id=146

お茶作り体験|美濃擂茶首創鋪(美濃擂茶首の1号店)

美濃区初のお茶屋さんで、外にはたくさんの植物が茂っていて、まるで違う時代に来たかのようなレトロな外観です。

取材の日、店の外には都会では珍しいレモンの皮と玄米が干されており、人々が足を止めて見ていました。店内は非常に伝統的な内装で、竹製のテーブルと椅子があり、伝統的な点心を頼むことができます。また、牡丹模様の提灯や客家の伝統衣装、さらには客家の人々が台湾に移住する様子を描いた絵などもあり、客家文化をより深く知ることができるようになっています。

準備が整うと、店主がお茶作り体験に必要な食材や道具をテーブルに並べます。
主な原料は黒ゴマ、白ゴマ、ピーナッツ、玄米です。摺鉢とすりこぎ棒は昔の道具を参考に店主が作ったものです。他の店より太くて長い棒が特徴です。

擂茶は一般的に挽く向きによって意味が違います。時計回りに挽くと「お客さんを迎える」、反時計回りに挽くと「お客さんを送る」という意味がありますが、この店はそういったことを問わずに挽くことができます。さらに味も一般の方が食べるような塩っぽい味ではなく、昔の役人が楽しんでいたような甘い味をいただけます。


雑穀を挽いてから、粉茶や小豆を順番に投入していき、すべての材料が粉末になったら、ようやく最初の一杯を淹れることができます。なかなか根気のいる作業です。
この時店員さんが教えてくれたのは、擂茶は摺鉢一杯で3〜5回淹れることができ、水の量を多くしたり少なくしたり、味を濃くしたり薄くしたりもできるので「この味わい方はまるで人生のよう」ということです。



お茶を楽しんだ後は、店内で「客家麻糬」という客家伝統のお餅の販売も行っています。数量に限りがありますので、お茶作り体験を予約される際にお店の方に相談することをお勧めします。この店の客家麻糬は、もち米をふんだんに使っているので消化がよく、ピーナッツパウダーを振りかけたり、茶粉や玄米を加えて食感を楽しんでも美味しいです。



食後は「割稻茶」を飲んで一日を終えました。「割稻茶」は、梅やオレンジの皮、レモンの皮を煎じたもので、消化を助け、脂っぽさを取り除く効果があるといいます。店主によると、以前はこのお茶はありませんでしたが、食後に体験しに来るお客さんが多かったので、追加したのだといいます。

店舗情報

店名:美濃擂茶首創鋪
料金:擂茶作り体験 1人150元、客家麻糬 1枚20元、割稻茶 1杯20元
住所:高雄市美濃區成功路142號
営業時間:11:00〜18:00

お茶作り体験の後は麺で小腹を満たしましょう|美濃粄條



美濃と聞いて台湾人の多くがまず思い浮かべるのは「粄條」です。
「粄條」はきしめんのような幅の広い麺で、主に米粉を使って作られています。美濃を訪れたら、ぜひ粄條を味わってください。

偶然にも「擂茶首創鋪」の近くに粄條を味わえるお店があります。目立つ看板はなく、入り口に「美濃粄條」と書いてあるだけで、お客さんのほとんどが客家民族です。食事をしていると店主が客家の方言で知人に挨拶をしているのがよく聞こえてきます。

美濃で作られた粄條はほとんどが手作りなので、麺の太さが様々です。麺の上にはフライドオニオンがたっぷりと乗っていて、その豊かな香りが粄條の味を引き立てます。北部に比べ、南部の味は塩辛くなりがちですが、このお店ではさっぱりとした味わいになっています。濃い味に慣れている方は自分で黒酢を入れて調整することもできます。これも粄條の楽しみ方の一つですね。

美濃の人は朝食に粄條を食べる習慣があるため、ほとんどの店が朝から営業しています。中でも美興街は最もお店が多く「粄條街」と呼ばれるようになったそうです。ショッピングも楽しめる「粄條街」であなたの好みの粄條を見つけてみてください。

店舗情報

店名:美濃粄條
料金:乾拌粄條 1杯45元
住所:高雄市美濃區成功路122號
営業時間:7:00〜20:00

美濃区を散策|永安老街

永安老街は美濃で最初にできた街で、200年以上の歴史があります。「永安」という名前は、この地にやってきた客家人が永住を希望したことが由来となっており、最初の通りは「永安街」と名付けられました。かつてこの通りは、この地域で最も賑やかな商業通りでしたが、時代の変遷とともに衰退し、現在は静かな路地として復元されています。

台湾で有名な「美濃舊橋」は、日本統治時代に架けられたもので90年ほどの歴史があります。旧橋は地域住民の交通手段として利用されてきましたが、新橋の開通に伴い、旧橋を利用する人は徐々に減っていきました。しかしそれでも廃橋にならないほど強固な橋でした。


さらに通りを進むと、永安老街で初めてオープンしたクリエイティブ商業施設の「啖糕堂」があります。建物は日本統治時代に建てられた古民家で、元は診療所でした。現在はパン屋に改装され、新旧が融合した建物に新しい息吹を吹き込んでいます。また、販売されているパンのほとんどは、地元の農産物や食材を取り入れており、地元でしか食べられない味に仕上げてあります。観光客だけでなく、地元住民のお土産にも喜ばれています。

店舗情報

店名:美濃啖糕堂
住所:高雄市美濃區永安路197號
営業時間:火・水・金〜日曜日 10:00〜18:00(月・木曜日は定休日)
アクセス:擂茶首創鋪から徒歩約15分

美濃文創中心(美濃区観光サービスセンター)


本館は日本統治時代の美濃警察支局で、バロック様式の外観が、素朴な美濃の街並みの中でひときわ異彩を放っています。

現在は財團法人薛伯輝基金會が運営しています。観光案内だけでなくカフェも併設されていて、近代日本建築の中でゆったりとアフタヌーンティーを楽しむことができます。また、定期的に様々な芸術文化展を開催し、著名な芸術家の創作品を展示していて、多元的に客家の文化に触れることができます。

店舗情報

店名:美濃文創中心
住所:高雄市美濃區永安路212號
営業時間:9:00〜20:00

まとめ

客家の文化というと、新竹北埔や苗栗公館の客家集落が有名ですが、台湾南部の高雄市美濃区にも独特の客家文化が残っています。お茶とお菓子の体験だけでなく、美濃区の文化遺産や田園風景からも、客家の豊かな文化や生活様式を体験することができ、とても魅力的です。高雄に行くときは、ゆっくりとバスに乗って美濃区まで足を伸ばしてみてください。

美濃区へのアクセス

①公共交通機関

  • 高雄火車站からバスで出発(左營高鐵站からも乗車可能)
  • 高雄火車站から高雄客運バス「高旗六龜快線E25」で「美濃站」まで

②自動車の場合

  • 國道1號-路竹交流で降りる-184縣道-旗尾から184縣道へ
  • 國道3號-田寮から國道10號へ-燕巢系統から旗山へ-旗山第二交流で降りる

YI SAN

台湾高雄出身の曽です。インターシップで日本に住んだことがあります。当時はよく神社や古跡 などに行って 、異文化や風土に触れることで、日本のことをより一層好きになりました。台湾に帰った後、台湾の良さも世界中の人に知ってもらいたいと思って、台湾の紹介記事を書き始めました。

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