青色の快速列車といえば、50~60代の台湾人にとって思い出深い列車であり、台湾の主要な鉄道路線で最も長く運行した旅客列車でもあります。そんな歴史の長い列車が2020年末に運行終了となり、車両の改修を経て、再び「藍皮解憂號」という名で観光列車として戻ってきました。屏東・枋寮站(枋寮駅)と台東站(台東駅)を1日1往復運行しており、記念のお土産や旅程表も販売されています。
「藍皮解憂號」は、手動で開閉する窓、レトロな扇風機、ロマンスブルーの外観、緑の革シートなど、レトロな特徴を多く残しています。車両内にはエアコンがなく、乗客は窓から入る自然の風と頭上の扇風機だけで過ごします!
この列車での旅はすべて専門のガイドによる解説付きで、列車の歴史や沿道の風景を詳しく紹介してもらえます。それだけでなく、いくつかの有名な駅を散策して、写真を撮りながら、鉄道旅行の魅力を教えてもらえます。
現代の列車に比べ、ゆっくりとしたスピードで走るので、沿線では海と空の美しい景色を眺めることができます。窓を開けて海風に吹かれながら、沿線の鉄道タイムを悠々と楽しむことができます。
海岸線鉄道の旅 | 枋寮 〜 台東
気晴らし旅の出発点|枋寮站
受付時間 : 9:30〜10:10
出発時刻 : 10:30
所要時間 : 約3時間
旅の出発点は台湾南部の屏東にある枋寮站(枋寮駅)です。枋寮鄉にあるこの駅周辺は、地方創生により村のほぼ全域が藝文觀光特區(クリエイティブ産業の発展を目的作られた芸術の村)として生まれ変わりました。待ち時間があれば、ぜひ散策してみてください!
枋寮站に入ると、青い旗と受付の看板が見えるので、それを目印にしてください。受付が完了すると、スタッフからツアー用のストラップ、観光チケット、食事券、記念トートバッグが入ったおみやげパック一式を受け取ります。全体的にとても印象に残るスタイリッシュなデザインに仕上がっています。中でもトートバックはお気に入りです。女子向けの小さなサイズなので、会社でお弁当を食べるときのランチバッグとして使うのがおすすめです。
案内に従ってホームに入ると、各車両の脇にガイドが待機していて、乗客一人一人に音声ガイド機が配られます。乗客が写真撮影に夢中でうっかりガイドと離れてしまっても、この音声ガイド機が列車の発車時刻をお知らせしてくれるので安心です。
車両の指定はありますが、座席の指定はありません。自由に好きな座席を選ぶことができます。窓際は外の風景を堪能でき、通路側はおしゃべりや写真撮影に最適な位置です。複数人で旅行している方は、座席を選んだ後に席を向かい合わせにすれば、4人向かい合って会話もしやすくなり、通常の列車とはまた違った楽しみを味わうことができます。
台湾最南端の秘境駅|枋山站
到着時間 : 10:45
停車時間 : 15分
次の目的地への出発時間 : 11:00
終点の台東駅までの所要時間は約3時間で、途中に2つの特別な停車駅があります。まずは台湾最南端の駅、枋山站(枋山駅)へ向かいます。鉄道を使わずに自家用車で行く場合は、途中に道路標識がないため、台湾で最もアクセスの難易度が高い駅として知られています。
容易にアクセスできない枋山站ですが、実は枋寮站から台東站を結ぶ南廻線の重要な分岐点になっています!元々南北に走っていたルートが、枋山站を境に東西のルートに変更されました。ガイドによると、枋山站から次の駅である太武站までの距離は30.2キロメートルもあり、台湾の鉄道駅間としては最も長いそうです。
枋山站から徒歩3分ほどで、果てしなく続く台湾海峡を見ることができます。夕方には夕日を楽しみに来た旅人も多くいるそうです。もう少し堪能したいとことですが、残念ながら停車時間が短く、すぐに次の旅先へ移動することになりました。
台湾で最も孤独な駅長がいる駅|枋野站
到着時間 : 11:09
停車なし
枋山站と大武站(大武駅)の間にある、小さな駅を紹介します。それが枋野站(枋野駅)です。実はこの駅では、電車も止まらなければ、乗客や荷物を降ろすようなホームもありません。この駅の目的は、南行きに単線区間を設けており、2本の列車が合流する際に衝突を避けるために短時間の停車ができるようすることです。また枋野站は南廻線の中で最も海抜の高い位置にある駅です。そのため、この駅では下り坂での風速試験も行っています。もし風速が24.5m/sに達したら、駅長は近くの列車に枋野站に一時停車するように知らせ、列車の安全を確保します。
枋野站の駅長は、ここで降りる乗客がいないため、台湾で最も孤独な駅長として知られています。毎日の仕事は、通過する列車の安全を監視し見守ることです。ここに同僚はおらず、乗客に会うこともないので常に一人しかいません。旅客列車が通るたびに、駅長さんが挨拶に出てきて、線路脇に立って、列車に乗る乗客に手を振って無事を祈ったものです。「藍皮解憂號」が手を振っている駅長の横を通り過ぎたとき、車掌さんが列車のスピードを落としてくれます。乗客全員が枋野駅長に挨拶できるようにしてくれ、みんなで手を振るシーンはとても微笑ましく可愛らしかったです。
ノスタルジックな夜行列車の旅「台湾で2番目に長い鉄道トンネル」
夜行列車体験: 約13分
次の大武站に到着するまでの間、台湾の東西を隔てる中央山脈を通り、台湾で2番目に長いトンネルを通過します。トンネルの一部では、車掌さんが車内の照明をすべて消し、小さな夜間照明だけを残してくれるので、昔の夜行列車に乗っているような感覚を体験することができます。ガイドの説明によると、今ほど鉄道が発達していなかったので昔の台湾では、長距離列車に乗ると今よりずっと時間がかかり、時には列車の中で一夜を過ごさなければならないこともあったそうです。
トンネルに入り、照明が落ちると、車内の騒がしい会話も魔法がかかったように静かになり、乗客たちは揺れる電車に没頭していました。トンネル内は無風状態が長く続いたため、若干の燃焼臭さはありましたが、違和感がないどころか、特別なレトロ感がありました。昔は乗るのが辛かった列車が、現代で体験すると、ロマンティックな雰囲気になるとは想像もしていませんでした。
南迴線で最も美しい区間「海に浮かぶ列車」
トンネルを抜けると、まるで暗闇の後の最も美しい夜明けのように、南海線の最も美しい場所に出ます。トンネルを抜けた瞬間は、たちまち目の前に空と海が一体となった景色が現れ、乗客みんなで「おおっ!」と声をあげました。列車は太平洋と平行に線路を走っているため、手を伸ばせば海に触れられるような感覚になりました。
台湾で最も美しい駅|多良站( 2022年リニューアルオープン予定 )
この旅の途中、鉄道ファンの間で「台湾で最も美しい駅」と評される、多良站(多良駅) を通り過ぎました。駅のホームは展望台になっており、多良站のホームからは海の絶景を見ることができます。しかし、残念ながら周辺住民の数が少ないため、利用客があまりに少なく、鉄道運営費を節約するために台湾鉄道局から15年もの間放置されてきました。
しかし電車が停車しなくなったとはいえ、近年はこの美しい駅を一目見ようと車で多良站に訪れる人が増え、今では台東南迴線の人気観光スポットの一つになっています。そのため、鉄道局に対して、気軽に駅を訪れることができるように、運行再開を懇願する旅行者が増えました。そんな願いを受け、鉄道局は2022年に多良站をリニューアルし、ゆっくりと走る列車と観光列車を提供できるよう準備する見通しが立っています。
その前に、この美しい駅をいつどこでも見られるようにと、多良站のライブカメラが設置されました。乗車中、ガイドが「多良站を通過したらライブカメラを再生してください」と言っていたので、再生してみると私たちの乗っていた列車が画面に映し出され、みんなで興奮していました。
昔ながらの味「滷排骨鐵路便當 」
「藍皮解憂號」では昼食に利用できる食事券を提供しており、車内で楽しめる駅弁と交換することができます。従来のアルミボックス弁当とは異なりますが、定番の滷排骨(スペアリブ)の煮込みには興奮しました。滷排骨は50年前に台中火車站構内の鉄道レストランで初めて紹介されました。シェフオリジナルのソースで作ってあり、発売してすぐ人気となりました!当時の総統である蔣経国さんもお墨付きだったそうです。50年前から販売されているこの弁当は、次第に台湾の全駅で販売されるようになり、いまや台湾の駅弁の定番メニューになっています。列車の中で、煮込んだスペアリブをかじるたびに幸せな気分になれますよ!
「スラムダンク」の踏切が台湾にもある!|太麻里站
到着時間 : 12:20
停車時間 : 45分
次の目的地への出発時間 : 13:05
窓から見える海の景色を眺め、潮風に吹かれてお弁当を食べながら、次の停車駅である太麻里站(太麻里駅)にやってきました。
太麻里站を降りた途端、夢のような海の景色が広がります。その後、ガイドの指示に従い秘密の通路を通ると、人気の観光スポットに到着します。ここは日本の鎌倉で超有名な観光スポット 「スラムダンク」の踏切と同じ光景を見ることができます。ただ、人混みも日本と同じくらいでうまく撮れないんですよね(笑)
気晴らしの旅の最終地点|台東站
到着時間 : 13:35 終着駅
太麻里を出発して30分ほどで、今回の旅の最終地点である台東站(台東駅)に到着しました。ここで終わらずに往復の切符を購入して、台東で寄り道をしてから枋寮に戻る人もいました。ガイドによると、往路と復路では停車駅が異なるそうです。復路で停車する金崙站(金崙駅)にはパイワン族(台湾南部に住む原住民族)の集落が存在し、パイワン族の酋長自ら集落に迎え入れ、原住民族の文化を紹介してもらうことができます。とても魅力的な体験ができますよ。残念ながら復路は満席でしたので、来年の旅行でまた来たいと思います〜。
偶然クラシックな蒸気機関車に出会う「仲夏寶島號」
台東站に到着後、クラシックな蒸気機関車「仲夏寶島號」に出逢いました。
「仲夏寶島號」は、毎年夏だけ走る観光列車です。2021年はコロナウィルスの影響で、年間で3本しか運行されませんでしたが、偶然にも今年最後の運行を目の当たりにすることができました。
まとめ
今回の「藍皮解憂號」の旅は、ガイドによる案内や面白い小話のおかげで、鉄道ファンではない私でもすごく夢中になる旅でした。歴史あるノスタルジックな列車に乗ると、無意識のうちにリラックスできて、沿線の風景に何度も驚かされ、本当に充実した旅になりました!日頃のストレスを解消するためにまたすぐにでも旅に出てしまいそうです。
藍皮解憂號觀光列車
片道運賃: NT$499 / 約¥2,050
往復運賃:NT$899 / 約¥3,700
営業時間:1日1往復(要事前予約)
公式サイト:雄獅旅遊網